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失敗できない不動産投資 CaseStudy -山形駅前通ビル-

投稿日

:

2022.02.01

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2022年1月14日にタカラレーベン不動産投資法人(3492)が不可思議に映る譲渡リリースを出しました。

-山形駅前通ビル-
引渡決済日:2022年2月25日
譲渡予定価格:237百万円・55千円/㎡(延床面積 4,304.16㎡)
取得価格:600百万円・帳簿価額:613百万円・鑑定評価額:634百万円
売却利回り:11.7%(実績NOI 27,683千円)・18.0%(鑑定NOI 42,699千円)
取得元:合同会社ジェイ・エックス・エス
譲渡先:投資法人及び資産運用会社との間に特筆すべき関係のない国内事業会社
URL)国内不動産信託受益権の譲渡に関するお知らせ

当投資法人(3492)は2018年7月のIPO時に当物件を組み入れており、当初600百万円の投資に対し保有4年弱で350百万円超の損失を被ることを今般決断したもので、その背景や事情は明らかにされておりません。しかし、一般の不動産投資家目線で見ると、当物件に係る一連のディールは結果論としていわゆる失敗投資に該当したと考えられます。


不動産投資の肝は 「物件毎に」 経営リスクを 「十分に検討し」 それを 「反復できる」 仕組みで判断を回し続けること

CYARea!の「物件別収支分析」機能を使って後述する通り、当物件は取得時より経営判断が極めて難しい物件であることが分かっていたはずです。今般膿出しを図ったように考えられますが、IPO時に当初ポートフォリオへ組み込んだ判断は健全だったのか、何故このタイミングにこの譲渡価格で放出するのか、はてまた、この一見お得?な買主は誰なのかなどについて、IRに説明不足が過ぎるように感じられます。

リリース内で本譲渡の理由を「今後見込まれる外壁改修や設備更新工事等の修繕費及び資本的支出並びに現状の稼働状況を踏まえた今後の内部成長余力を勘案した結果」としていますが、取得時に実施している建物状況評価の調査業者と担当鑑定評価機関とが同一である当物件では説得力に欠ける面があるように思われます。当物件に災害など不可抗力による毀損があったわけではなく、今後の内部成長余力(≒純収益の変動予測)というものは取得時の還元利回り(Cap Rate , Capitalization Rate)に織り込まれていなければなりません。

CaseStudy)物件別収支分析-山形駅前通ビル-

> レーダーチャート
① 運営収益が極端に弱く直近年度の収支総合評価は実績30points、鑑定33pointsと変わらず
② 支出項目別に善処みられるも運営費用が相場の域を脱し得ていない

> 箱ひげグラフ
①’ 山形の代表的オフィスエリアの立地も床有効率58.2%と低く賃料水準が延床坪5,000円に及ばず低廉
②’ 維持管理費を抑えるも経年により修繕費水準は致し方なし

> 総括
✓ 保有期間中において修繕費の増減はあるも収支総合評価を著しく変動させるものではなかった。
✓ 鑑定評価の標準経費率ですら40%台。取得後の実績経費率が初年度より50%近くで推移し、各期中の稼働状況に経費率レバレッジが掛かる結果NOIを激しく変動させてしまう物件であった。

> 結論
貸主優位に成り得づらく経営判断の難しい局面が続く物件というのは把握できたはず。
取得するのであれば割り戻す対象となる運営収益(NOI)の分析結果を踏まえ当物件特有の不安定性を考慮したリスクプレミアムを利回りへ十分に加味すべきだった。


参考> 不動産の収益力と還元利回りとの関係

事例データの収集だけですごく時間が掛かってしまって本来大切な分析業務を疎かにしてしまった経験はありませんか?

CYARea!では、験証してみたい収益不動産の所在と建物延床面積などの物的事項や年間収支状況の入力により「物件別収支分析」で各種分析グラフを一覧でき、これから不動産投資を始めようとする⽅や投資の経験知識が浅いスタッフでも、投資対象としてアリかナシかといった収益不動産の初期的な分析を手軽に行っていくこと(より多くの数をこなし研鑽していくこと)が可能となります。

購入決済までとても親切だった不動産仲介業者も決済後は頼りにできないものです。分析想定はその大小に関わらず取得前にしっかりと実践しておきたいところ。確保した時間を使って種々の討議を深められればパフォーマンス験証の精度とその付加価値はより向上し、不動産投資における合理的な判断が加速させられます。

詐欺被害や挫折体験の防波堤として

昨年11月26日に開かれた2022年3月期第2四半期決算説明会において、スルガ銀行(静岡県沼津市)は、収益不動産への融資のうち6,037億円分に未回収リスクがあることを明らかにしました。
収益不動産投資では、虚偽の内容を記載したレントロールを見せられ相場より高い値段で買わされるといった被害や、空室へダミーの入居者を入れて高い値段で売りつけるといった悪質なケースも残念ながら見られております。このような詐欺被害や、収益不動産購入後に「もしかして騙されたのか」と感じられる挫折体験の防波堤としてCYARea!を機能させ、少しずつでも不動産投資市場の成熟へ寄与出来ればと考えます。

不動産経営自体を可視化させるサービスとして

近時、持て囃されている人工知能(AI)が総じて正であるならば、例えばAIを株式投資判断に活⽤して選別させた有望銘柄に投資し続けると⾼確率で⾼収益を維持していけるはずです。しかし、果たしてその⽔準に達するでしょうか。
ブラックボックスといわれるような出⼒結果の内部の構造は、信頼⾜る然るべき専⾨家がそれぞれ構築しているのでしょうか。例えば、⾦融機関等の債権者が担保価値の「参考」としてAI査定を活⽤する場合、その⼿軽さが魅⼒的なように考えられますが、現実にトレードを⾏って当事者として実損益が発⽣してくる基準として使⽤するのであれば話が別のはずです。この場合では、AI査定の結果も参考材料として前述した収支分析を自ら精錬し投資判断基準を深化させていくスタンスの方が賢明でしょう。

参考> 不動産業者から紹介された物件情報の整理方法

仮に、今回CaseStudyの対象とした山形駅前通ビルについてAI査定結果が814百万円だったところ、首尾よく600百万円で取得出来ていたものとします。それでも、わずか4年弱で350百万円超の損失を被ることになったのです。当物件ですが、パッと見た感じでは特に奢侈な様のない標準的オフィスビルのように思え、AI査定がうまく活用出来そうに考えられました。そのAI査定結果が民間最大手の不動産鑑定評価機関による鑑定評価額と一致していたとしても如何でしょう(実際に当物件取得時における鑑定評価額が814百万円でした)。結局のところ、投資責任はあくまで投資家自身に帰属するのです。このやり場の無い怒りはどこへ向けられるでしょう。なので、(挫折体験に遭う前より)自ら精錬し深化させた投資ロジックこそ不動産投資家は大切にされなければならないと思われるのです。

CYARea!では、成熟が進む「他業界」テックに同じく「最終生産物」の価格可視化にあらず「生産過程」へ焦点を当てた不動産経営自体の可視化で収益生産性「向上」の道筋を示せるサービスを充実させて参ります。
現在国内における不動産テックサービスは、インターネットを利用したマッチング、⼈⼯知能(AI)を利用した物件価格の可視化・査定、IoTを利用したスマートロック、VRを利用した内覧システムなど概ね12分野に分類されてきており、「生産過程」へフォーカスし不動産経営自体を可視化させるサービスというのは、既定分野への当て嵌めがやや難しくマーケットの理解や浸透に時間が掛かるかもしれないものの、業界紙などに取り上げて頂きつつ徐々にその認知は高まっています。

投資不動産の収支分析やストレステストならCYARea!

CYARea!は、「今なら幾らくらいが妥当か」の前提であって、本来その基底にあるべき この収益性は持続できるのか 収支のアップサイド/ダウンサイドリスクはどれくらいか といった検討が深まる多⾓的分析を⾏えるサービスです。

もし収益不動産の収支分析やストレステストをお考えになるならCYARea!“物件別収支分析”を是非ご活用ください!
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ちゃりー! りあるえすてーと

ちゃりー! りあるえすてーと

◆収益不動産の経営分析クラウドサービス「CYARea!(ちゃりー)」公式アカウント https://cyarea.jp ◆上場事業会社の財務畑出身 不動産の評価分析やアセットマネジメントがコアな経歴の3児の父 ◆晩酌はザ グレンリベット 12年 ◆不動産経営におけるファンダメンタル分析を模索しています #不動産経営分析 ◆腑に落ちた記事がありましたらSNS等へシェア頂けると嬉しいです! https://twitter.com/CYARea_jp