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【収益不動産】失敗投資と成功投資の違い?-実例で分かる投資前分析-

投稿日

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2023.06.08

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今般『シミュレーション』画面へ追加搭載したNOIシナリオの自動組成機能は、収益不動産のプロフェッショナルが実践するストレス分析テストをCYARea!ユーザーなら自動で確認出来る他に類を見ない機能です。
各シナリオとその分析結果が簡単に一覧表示されますので、経営収支状況のボラティリティを正しく把握し投資適格事案を冷静に分析/整理することが出来るようになります。

URL)新シミュレーション|CYARea!

【収益不動産】失敗投資と成功投資の違い?-実事例におけるステレス分析テスト比較-

今回は実際の不動産投資事例(成功/失敗)が新機能でどのように映るかのCaseStudyです

以前のレポートでタカラレーベン不動産投資法人(3492)の譲渡リリースに関し所感を述べたことがあります。

-山形駅前通ビル-(山形県山形市)
譲渡価格 237百万円・55千円/㎡(延床面積4,304.16㎡・1984年築)・直近稼働率71.9%(8テナント)
取得価格 600百万円・帳簿価額 613百万円・鑑定評価額 634百万円
譲渡価格利回り:11.7%(実績NOI:27,683千円)・18.0%(鑑定NOI:42,699千円)
当投資法人(3492)の直近決算期LTVは46%

URL)国内不動産信託受益権の譲渡に関するお知らせ

当物件は取得時より経営判断が極めて難しいと捉えられる物件でした(以前のレポートへ記載)。
結果として、資産運用会社である”タカラPAG不動産投資顧問株式会社”による高値掴みであったと云われてしまうような格好で、大阪エリアで堅調に経営出来ていたはずのオフィスビル2棟による譲渡益と当物件による譲渡損失との相殺が資産運用会社内で企図され、3棟同時売却へと踏み切られた実事例になります。

不動産投資における一般的な成功率はどれくらいでしょう。失敗パターンや失敗しない投資戦略などはないのでしょうか。

↓↓↓ 当ディールで犠牲??にされてしまった大阪オフィスビル2棟の概要です ↓↓↓

-心斎橋ビル-(大阪府大阪市中央区)
譲渡価格 850百万円・398千円/㎡(延床面積2,134.97㎡・1990年築)・直近稼働率86.2%(6テナント)
取得価格 772百万円・帳簿価額 767百万円・鑑定評価額 777百万円
譲渡価格利回り:2.9%(実績NOI:24,358千円)・4.6%(鑑定NOI:38,708千円)

-中央博労町ビル-(大阪府大阪市中央区)
譲渡価格 1,950百万円・362千円/㎡(延床面積5,390.95㎡・1993年築)・直近稼働率100.0%(17テナント)
取得価格 1,485百万円・帳簿価額 1,481百万円・鑑定評価額 1,950百万円
譲渡価格利回り:4.3%(実績NOI:84,386千円)・4.7%(鑑定NOI:91,803千円)

3棟いずれも同一の民間最大手機関が建物状況評価の調査と不動産鑑定評価とを担い、2018年7月のIPOで同時に投資法人のポートフォリオへ組み入れられていたことから保有期間中に影響を受けた社会経済要因の変化等が共通し、高い比較可能性を有しています。

以下、これらオフィスビル3棟について取得前情報からストレステストで映されていたはずの状況と運用成績とを比較します。
収益不動産に係る投資/経営の判断において、取得前分析を疎かにしていたり間違えているのでは、思い通りに資産価値は維持出来ず、不動産経営を将来に亘って継続する(失敗/挫折しない)ことなど叶いません。

CaseStudy①)-山形駅前通ビル- 取得前調査におけるストレステスト状況

✓ ダウンサイド(悲観的)シナリオ下で著しく高経費率(低NOI)に至ると示され危険領域に入る
評価「★」→ 売却時キャピタルロス

譲渡価格-取得価格=▼363百万円損(=取得価格×▼60.5%相当損失・保有3年6ヶ月間)
※ 譲渡価格-帳簿価額=▼376百万円損

CaseStudy②)-心斎橋ビル- 取得前調査におけるストレステスト状況

✓ 同エリアに立地する下記CaseStudy③と比べ各シナリオ下のNOI利回りが45bp~70bpほど低くなると示唆
評価「★★★」→ 売却時キャピタルゲイン

譲渡価格-取得価格=+78百万円益(=取得価格×+10.1%相当益・保有3年6ヶ月間)
※ 譲渡価格-帳簿価額=+83百万円益

CaseStudy③)-中央博労町ビル- 取得前調査におけるストレステスト状況

評価「★★★★」→ 売却時キャピタルゲイン
譲渡価格-取得価格=+465百万円益(=取得価格×+31.3%相当益・保有3年7ヶ月間)
※ 譲渡価格-帳簿価額=+469百万円益

収益・支出:運営収支の変動項目について所定標本に基づく比較値を参考に、貸室賃料収入を現行▼20%~+10%の範囲で変動させるストレステストを実施。
収益のみ:運営収益の変動項目について所定標本に基づく比較値を参考に、貸室賃料収入を現行▼20%~+10%の範囲で変動させるストレステストを実施。
支出のみ:運営費用の変動項目について所定標本に基づく比較値を参考にストレステストを実施。
主要用途が「その他_土地・底地等」の場合:運営収益の変動項目について所定標本に基づく比較値を参考に、地代収入及び貸室賃料収入を現行▼20%~+10%の範囲で変動させるストレステストを実施。

参考)CYARea! ストレステストにおけるNOIシナリオ対象の種類

CYARea!で求められるNOIは、純粋な運営純収益(Net Operating Income,運営収益から運営費用を控除して得られるもの)を示し、不動産保有期間中の減価償却費や所有者属性に基づく所得税等は考慮外です。よって、DSCR(元利金返済カバー率,Debt Service Coverage Ratio)については、減価償却による資金内部留保効果と実効税率(法人税,住民税,事業税などを合計した実質的な負担税率)とを勘案して150%程度をリスク管理の基準値に一先ず置かれた方が望ましいと思われます。

参考)CYARea!で表示されるNOIとDSCR

取得(予定)価格が所与であるとして、もしご覧頂いているような分析情報を資産運用担当者として投資前に収集出来ていたとしたら、CaseStudy③の物件取得を優先できなくてはなりません。

専門家である資産運用会社が株主から拠出された事業資金を元手として現実行った苦渋の判断を題材にしているため極端に明瞭であってしまってもならない事例ではありましたが、CaseStudy① > CaseStudy② > CaseStudy③ の順に高リスク物件であると取得前の段階で映っており、そこに示された一つ一つの指標が僅かな変調を映すに過ぎなかったとしても、実際3年と半年保有した後に CaseStudy①(▼60.5%相当損失)< CaseStudy②(+10.1%相当益)< CaseStudy③+31.3%相当益の大きさで譲渡損益額が実現される場合があったこと注意を払って下さい。大まかな傾向さえ掴まれると他の投資家との決定的な違いになって、お手元の独自物件情報を当機能でご確認なさる際の判断(スクリーニング)等々が断然容易になるはずです。

✓ 個別特有の固定費には下方硬直性があるため稼働率の変動等でNOI(運営純収益)や経費率の悪化が思いのほか厳しくなることがあります。
✓ 例えば中立的シナリオにおけるNOI利回りは立地エリアや用途、築年数等を踏まえ比較しなければなりません。
✓ 経営収支のボラティリティ(=各指標の変動幅)を俯瞰していくと経営判断の難しい局面が続くような高リスク物件を捉えられ、個別特有の不安定性(≒純収益の変動予測)を取得時の還元利回り(Capitalization Rate
Cap Rate)に織り込まなければ高値掴みとなって出口戦略に躓くでしょう。

参考> 不動産の収益力と還元利回りとの関係|CYARea! Magazine

シミュレーションの新機能が検討の合理的判断を加速させます

『この物件は調査しない』『これなら追加の資料請求をしてみよう』

収益不動産のスクリーニング(振るい分け)では、不動産経営を将来に亘って継続する(失敗/挫折しない)ための前提条件や不測の事態における緊急予備資⾦を踏まえ「取得してはならない物件」「保有すべきでなかった物件」の判断に神経を注ぐようにします。

失敗投資物件の仕入れを極力見送ることが出来れば、譲渡損失を補填するため堅調に経営出来ている物件の売却を強いられるようなことはなくなります。
失敗理由の験証を重ね投資適格事案を冷静に分析/整理して正しい投資行動を採れるようになると投資の成功体験へ近付きます。

事例データの収集だけですごく時間が掛かるため本来大切な分析業務を疎かにしてしまっていませんか?
投資は常に勝者と敗者とを分けており、第三者からの定性情報や都合が良いお墨付きばかり鵜呑みにして研鑽怠っているのでは勝率高まるはずなく、研鑽にはその方向性が重要です。

「CYARea!(ちゃりー!)」は、収益不動産を精査されることのある方々へ向けたサービスであり、これから不動産投資を始めようとする⽅や投資の経験知識が限られるスタッフでも付加価値の⾼い収益不動産分析が可能となるアウトプット(レポート)を設計しています。
ユーザーの成功体験へよりダイレクトに繋がる機能としてストレス分析テスト(NOIシナリオの自動組成)を構想しましたので、多くの方々がご⾃⾝の判定の是⾮を問われる場⾯でご活⽤下さればと願っています。
会員登録などの⼿続きを行わなくても回数制限なく無料でご利⽤頂ける仕様で機能ローンチしています。

まずはお手元の既存保有物件などから『シミュレーション』を試してその分析状況を振り返ってみてはいかがでしょうか。今回のCaseStudyよりもっと顕著な違いや隔たりを確認されることもあるでしょう。気付かれていないだけで成功体験へ繋がる独自の投資基準は既に完成しているかもしれません。

URL)新シミュレーション|CYARea!

参考> ストレステスト(シナリオ自動組成)機能をシミュレーション画面へ追加|CYARea! Magazine

ちゃりー! りあるえすてーと

ちゃりー! りあるえすてーと

◆収益不動産の経営分析クラウドサービス「CYARea!(ちゃりー)」公式アカウント https://cyarea.jp ◆上場事業会社の財務畑出身 不動産の評価分析やアセットマネジメントがコアな経歴の3児の父 ◆晩酌はザ グレンリベット 12年 ◆不動産経営におけるファンダメンタル分析を模索しています #不動産経営分析 ◆腑に落ちた記事がありましたらSNS等へシェア頂けると嬉しいです! https://twitter.com/CYARea_jp