https://media.cyarea.jp/458/

収益不動産を購入する際にもっとも大切なこと

投稿日

:

2021.10.14

LINE

収益不動産を購入する際にもっとも大切なことは、物件概要書に記載されたNOI(Net Operating Income:運営純収益)を、ネットで調べた還元利回りで割り戻すことではなく、確定と確認によって、取引の対象となる権利の存否及びその内容、現実の利用状況等を照合し正しく把握することだと思います。不動産評価分析(Valuation)においても同様のスタンスが取られます。

 

収益還元法の基本構造は、収益価格P=純収益a÷還元利回りCRという等式です。

不動産の評価分析でも取引でも大事にしたいのは確定と確認です

不動産には種々の権利契約が設定されている

結果、純収益と還元利回りの割り算でしかないため、ともすれば物件概要書に記載があるNOIを、ネットで調べてみた還元利回りで割り戻せば一先ず収益価格(買付希望価格)の検討が可能です。

しかし、不動産取引でもっとも大切なことは確定と確認であり、確定とは、取引の対象を明確に他の不動産と区別して特定することで、現実の利用状況との照合を経て最終的に確定されるものです。

確認には、物的確認及び権利の態様の確認があり、物的確認は、取引の対象となる不動産を実地に確認して明確にすることを指します。権利の態様の確認は、物的に確認された不動産について全ての権利関係を明瞭にすることによって、取引の対象となる権利の存否及びその内容を照合することをいいます。

不動産については、種々の権利契約が設定されていることが多いため、所有権以外の権利も含めて全ての権利関係を明瞭にし、権利の存否及びその内容を確認する必要があります。

通行に必要な私道が複数名で共有されている場合、過去の取引において売買の対象から漏れてきてしまっており、共有者が不明になっているゾンビのような筆が生じていることも珍しくありません。この場合、確定測量図の作成が難しくなってしまいます。

権利の態様の確認では、登記情報等で確認できない権利についても現実の利用状況等から把握する必要があります。例えば、看板使用料・アンテナ設置料・貸会議室利用料・自販機収入の有無などは登記情報へ記載されるものでは当然ありませんので、内覧を含む実地調査を経なければ確定出来ないはずです。

契約内容は入出金状況との照合まで行えれば望ましい

なかでも賃貸借契約内容は、契約の目的、契約当事者、契約期間、契約数量、月額支払賃料、一時金の有無とその内容及び特約の有無などについてを賃貸借契約書や覚書等で確認するだけでなく、賃料支払の猶予や免除が疑われるような場合、PM会社から不動産オーナー宛に発行された送金明細表などで入出金履歴の確認まで行った方が望ましいこともあります。

以前、不動産購入に関するコンサルティングで、金融機関による融資に必要で取得した鑑定評価に係るプレゼンテーションへの同席を依頼されたことがありました。プレゼンテーションといっても、鑑定業者は既に金融機関へ概算報告済みで、それに基づき金融機関は融資稟議を仮決裁していた状況でした。しかし、いざ鑑定評価の内容を確認していくと、そこには子細な各試算内容が記載されていたわけですが、鑑定評価額へ更新料収入の反映を漏らしていることが明らかになってしまいました。そこに本来の更新料収入を填め込むと、鑑定評価額が変わってしまう状況です。顧客としても金融機関の稟議仕切り直しでは決済日に間に合わなくなるため同席者全員血の気が引いた記憶があります。

不動産経営には悪質な被害に遭うリスクも潜んでいます

収益不動産投資では、虚偽の内容を記載したレントロールを見せられ、相場より高い値段で買わされるといった被害も生じています。ほかに、売主が空室へダミーの入居者を入れて高い値段で売りつけるといったケースもあります。

このような「飾り付けられた純収益a」を「リスクを軽視した低い還元利回りCR」で割り戻して求められる「過大な収益価格P」を適正と判断してしまわぬようにするには、比準価格(単価)と収益価格(利回り)との相互験証などが有効な方法になるでしょう。
不動産業者から紹介された物件情報の整理方法
不動産の収益力と還元利回りとの関係
・分析事例> 失敗できない不動産投資 CaseStudy -山形駅前通ビル-
・分析事例> 【収益不動産】失敗投資と成功投資の違い?-実例で分かる投資前分析-

一方で、これは偽装とは異なりますが、売却を視野に入れた不動産について、極力費用を節約して運用したくなるのは売主の立場としては通常です。しかし、これにも限度があり、各種法定点検における違法状態や、有事の際の毀損リスクを保険でカバー出来ていない状態などが数年に亘って放置されている物件も少なくありません。

修繕履歴が整理されていない物件などについて、しっかり現地を見ておかないと、購入後すぐ、想定していなかった多大な更新費用が掛かってしまうことも珍しくありません。 今年に入って、外階段の崩落が発生したアパートがありましたが、魅力的な価格で見に行ってみたら建物があまりに安っぽかったなどといった理由で、当該業者からの購入を見送っていた賢明な投資家もおられたようです。

CYARea!を活用すると、価格可視化や資金調達、仲介・管理業務の基底となるべき経営状況分析の負荷を最小限に抑えることができ、投資対象としてアリかナシかといった初期的な討議や合理的判断を加速していくことが出来ます。大事の前の小事、どちらも軽んじるべきではありませんが、事例データの収集だけですごく時間が掛かってしまったり、本来の優劣が逆転してしまわれたような経験はどなたにでもあるのではないでしょうか。購入決済までとても親切だった不動産仲介業者も決済後は頼りにできないものです。株式保有では、選任した優秀な経営者が会社の新陳代謝を勝手に図ってくれますが、不動産保有では「もしかして騙されたのか」と感じられるようなパフォーマンスについても、その責任は基本的に全て投資家へ帰属してきます。よって、分析想定についてはその大小に関わらず購入前に実践しておきたいものです。

「凡事徹底」という言葉もあります。徹底してやり続けようとすると予想以上に難しいことだと感じられるかもしれませんが、内覧を含む実地調査のような「普通のこと」を疎かにせずしっかりと実践していくことが、収益不動産の購入を検討する上で実はとても大切なことであると思っています。

ちゃりー! りあるえすてーと

ちゃりー! りあるえすてーと

◆収益不動産の経営分析クラウドサービス「CYARea!(ちゃりー)」公式アカウント https://cyarea.jp ◆上場事業会社の財務畑出身 不動産の評価分析やアセットマネジメントがコアな経歴の3児の父 ◆晩酌はザ グレンリベット 12年 ◆不動産経営におけるファンダメンタル分析を模索しています #不動産経営分析 ◆腑に落ちた記事がありましたらSNS等へシェア頂けると嬉しいです! https://twitter.com/CYARea_jp